ドイツの美術学校では、一年に一度「RUNDGANG」という学内展があります。 個人で展覧会をやっている人も希にいますが、如何せん学生なのでレベルは低く、 誰もがそう簡単に展覧会など出来ないのが現状です。そうなると年に一度のRundgangは、 唯一の発表の場であるので、みんな気合いを入れて望むことになります。
待ちに待ったRundgangは、7月12日19時、学長の挨拶で幕を開けました。
これでやっと、最後の追い込みで疲れ切った心身が、ホッとできる嬉しいときです。
メジャーな大学のRundgangには、ギャラリーや新聞記者など、
多くの美術関連の人々が若い作家を捜しにやって来るのですが、
ここカッセル大学では、学生と近所の人達が溢れ返っていました。
そんな事に、くよくよしていても仕方がないので、
他の学生がどんな作品を出したのか偵察に行くことにしました。
カッセル大学には美術の他に産業デザイン、服飾デザイン、映画、アニメーションなど、 多くの学科に別れているので、展示作品も色とりどりなのが、他の美術大学と違うところだと思います。 それが良いか悪いかは分からないけど、全く興味の無いモノもあることは事実です。
僕が絵を描いているということもあって、自然に興味は絵画へと向かうのですが、
現代美術の流れからか、油絵を描いている学生が激減してしまい、少し物足りない感じがしました。
みんなインスタレーションやビデオなどに興味を持ち、その方面の作品が多くなっています。
写真を使った作品が多かったのも、近頃の流行りなのでしょうか。
ドイツの大学では、学生は一人の教授の元で勉強するのですが、 その為クラスのカラーがハッキリでてきます。勿論学校の傾向も出ているので、 ドイツの大学を受験しようと思っている人は、まずその学校のRundgangを見ると、 学校を選ぶ良い参考になると思います。教授選びにも欠かせないことです。 教授の作品が大好きで、日本から遙々やって来たけど、 そこのクラスが面白くないって事もよくある話ですから。
さて、実際に各クラスを廻ってみて思ったのですが、
やっぱり絵画のクラスが見るも無惨に衰退していました。
そして、絵描きが絶滅しつつあるのを横目に、
ビデオや写真を使った作品群がゴロゴロころがっている。
そんな状況に絵描きの僕は「う〜ん」と唸りつつ、複雑な気持ちになりました。
若さ溢れる1年生クラスから、プロ並みの仕上げ(内容は疑問だけど)のクラスまで様々ではあったけど、 「去年よりは面白くなったなぁ」というのが素直な感想でした。これといって面白い作品がないのは、 例年通りなんですが・・・。
さてさて、人の作品のことより自分の作品について。
僕のクラスは、数少ない絵画クラスの一つなのですが、非常にドイツ風味の効いたクラスです。
その中で、僕の作品はやっぱり日本臭く、少し異質な感じがするのですが、それはそれで目立つので、
人々の関心を引いたことを祈っています。
確かに多くの人が、「面白いね」と言ってくれたのだけど、
悲しいかな、誰も絵を買ってはくれません。
まだまだ修行が足りないことを痛感した展覧会になりました。