OSTERCUP
カッセルのギャラリー「stellwerk」での3人展。


「一緒に展覧会でもやるか?」
この、トーマスの言葉から始まり、あっという間に展覧会が実現した。

あまりにも唐突な言葉だったから、思わず「え?なんて?」と聞き返してしまった。 当のトーマスは、平気な顔をして、「だから、展覧会をやろうって言ってるのだ。」と、 言い放つ。「そんなに簡単に展覧会ができるものか!」と思いつつも、「いいよ。」 と、簡単に答えてしまった。ニコッと不敵な笑いを浮かべ「チャオ!」と、そのままトーマスは帰ってしまった。 しかし、考えれば、考えるほど、訳が分からない。展覧会はやりたいが、そう易々とできるものではないはずだ。そんなことは、前回のグループ展や、クラス展の時で痛いほど経験している。場所探しから始まって、スポンサー探しなどなど、難問をひとつひとつ片づけて、息も切れ切れで、やっとこさオープニングを迎える事ができるのだ。

もしこれが、「うちで、展覧会をやるかね?」と言うギャラリーからの誘いだと、話は変わるのだけど、今回のように学生が何人かで発表をしたい場合だと、相変わらずややこしい事が多い。まてよ、トーマスは確かに、「ベティーと展覧会をやるのだけど、一緒にやるか?」と言ったのだ。ならば、既に場所は確保しているのだろうか?それなら、話ははやい。あの苦労無くして、展覧会ができるなら万々歳だ。が、翌日聞いてみると、まだなーんにも決まっていないと言う。やっぱり。
ならば、どうするのかと思うと、「今からstellwerkに電話をかける。」と言う。まさに「よーいドン!」だな。ところが、電話をかけてきたトーマスは「来週からやることになった。」といとも簡単に言うではないか。信じられないが、そうなったのだ。stellwerkというと、カッセルで唯一と言っていいほど、まともなギャラリーなのだ。嬉しくなってしまった。


そんなうまい話はある訳もなく、よくよく聞くと、stellwerkの経営がガタ落ちになり、ついこの前から、ギャラリーの運営資金は、ドイツ鉄道、カッセル市、大学生協での共同出費になり、実際の運営は学生などが数人で行うと言う。しかも、僕たちが取った日程は、イースターを挟んだ2週間であったし、大学は春休みということもあって、がら空きになっていたのだ。しかし、理由はどうであれカッセル中央駅構内にある、ギャラリーで展覧会をできるようになったのは、嬉しいことなのだ。スポンサー探しも要らないとくれば、文句は無い。やるぞ。

準備期間が1週間と短いため、ドタバタと準備が進み、出品作品を決めたり、招待状を手作りで作ったりしているうちに、あっという間にオープニングの日が来た。



オープニングの時に何もないと淋しいので、何かしようということになり、丁度資金も余っていたので、「お笑いセミナー」を呼ぶことになった。ベティーが、このセミナーをテレビで見て、非常に面白かったらしく、強く押してきたのだ。反対する理由もなく、面白そうだからというだけで、決まったのだ。しかし、これがヤバかった。

オープニングが8時からだったので、8時半頃からセミナーが始まった。何をやるかと思えば、お笑いのボスを囲むようにみんな輪になり、彼の言うがままに、ラジオ体操のようなモノを始めた。彼曰く「よく笑う為に、身体をほぐしましょう。」変な雰囲気だなあと思いつつも、展覧会に来てくれた人々もみんな、そのヘンテコ体操をやっている。そこで、本領発揮!今度は飛んだり跳ねたりしつつ、一つの動作が終わる毎に、「わははははは」と意味もなく笑うのだ。みんな、笑いを強制され、笑う。会場は怪しい空気に包まれ、嘘の笑い声が耐えない。変な宗教団体のようになり、僕は5分も経たないうちに逃げ出した。トーマスも逃げて来たのだけど、ベティーだけは、自分が勧めた責任からか、苦笑いのまま参加している。しかも困ったことに、予定の30分が過ぎても、まだまだお笑いセミナーは続いている。セミナーの生徒達も連れてきていたので、調子に乗ってきたらしい。数人の客も面白くなってきたようで、妖しい笑い声が絶えない。この雰囲気に耐えられない人達は、一様に困った顔をして、何時終わるとも知れない、セミナーを寒い外で待つことになってしまった。



待つこと1時間。やっと終わったらしく、得意満面でボスが出て来た。生徒達も「今日は、すこぶる良く笑ったわね。」などとほざきながらホクホクしている。その後には、精魂尽き果てたような暗い顔で、肩をガックリ落としたベティーがいた。ご愁傷様です。

オープニングジャックに遭ったものの、その後は気持ちよく普通のオープニングになり、やっと展覧会ができたことを、ひっそりと喜ぶことができました。
この展覧会は、会期の真ん中にもう一度パーティーをして、作品も総変えするという事になっていたので、またもやパーティー。もちろん今度のパーティーに、ヤツを呼ぶはずもなく、よく知っている友人だけで、楽しく和やかな雰囲気で過ぎていった。


展覧会は、絵も売れることなく終わってしまいましたが、こうして真っ白い壁に掛けると、新鮮で楽しかった。「まだまだ完成にはほど遠いなあ」と言うのが、素直な感想です。

出品作品はGalleryにあるので、見て下さい。
トーマス&ベティーの作品はこちらです。


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