ドイツの 野鳥
自然が深いドイツは、野鳥天国。




 散歩の途中、ふと足を止め、耳を澄ませば小鳥のさえずりが聞こえる。いつもの風景。でも気になる。声のする方を見ていると、小鳥が飛び出してくる。

「おっ!」

これが始まりでした。


 見れば見るほど、興味深い野鳥。「名前はなんだ?」「この声は?」と、見る間に魅惑され、気付いた時には、もう野鳥の虜。日本に帰った時も、野山を駆け巡り、多くの野鳥を見ることができ、ドンドン深みに。地元、愛媛県西条市の市の鳥は、あの「カワセミ」。どこだどこだと見に行き、水面にコバルトブルーの尾を引くカワセミを目撃することで、野鳥観察熱は一気に沸騰。もう、とまりません。

 野鳥観察用武器として、基本の「双眼鏡」「野鳥の本」に加え、鳥の鳴き声が出せ、鳥を呼ぶことのできる「バードコール」という、優れものも入手。さらに踏み込み、望遠カメラまで衝動買い。ドイツに帰って来てからは、隙あらば野山に分け入る毎日です。

 ということで、今回は、ドイツの野鳥を追ってみました。


ウタツグミ
ウタツグミ

 カッセルには、ヘラクレス像が目印の、ウィルヘルムスヘーエ公園があり、ここはヨーロッパ最大の丘陵公園。ドイツの公園がそうであるように、ここも殆ど野放し。この野放しとは、いい意味での野放しであって、管理はしっかりされています。日本の公園のように、セメントの歩道や、不細工なモニュメントなどが無い、という意味での「野放し」です。枯葉もビッシリ積もっています。小手先の技で、どうにか自然らしくしようとする日本の公園とは大違いです。しかも、ヨーロッパ最大と謳うだけあって、広さはなんと300ヘクタール以上。奥まで入り込むと、外の音など聞こえず、人も居なくなり、公園というより、まさに

 どの木も、日本では大木になるだろう大きな木ばかり。日本で「森」というと、イメージが「お寺の境内」などとなってしまうのですが、ここを歩くと、「森」のイメージが実感できます。

 この森の入り口で、歌声も高らかに登場したのが、ウタツグミ(歌鶫 写真上)です。結構大きめの鳥で、声も気になるので発見し易い鳥のひとつです。発見し易いといえば、カケス(懸巣 写真下)もそうです。しかし、カケスは近づくと「ギャーギャー」と騒ぎ立てて、飛んでいってしまいます。近くで観察できないのが残念です。


カケス
カケス

 ブンブンと小鳥たちも飛び交い、騒がしいほどの森の中ですが、その鳥の声に混じって、「こここここっ」という、木を突く音が聞こえます。「お、キツツキか!?」と音のする方へと、そっと落ち葉を踏みしめながら進むと、「フィーフィー」と一際大きな声がします。更に分け入ると、キツツキではなく、ゴジュウカラ(五十雀 写真下)でした。


五十雀
ゴジュウカラ

 虫を探しているのか、こつこつと木を突きながら、木を這い回っています。「あんな小さな身体で、大きな音が出せるものだ。」と感心しながら、じっくり観察しました。なかなか興味深い動きをしています。忙しなく動き回ったかと思うと一転、じっとして自らを誇示するかのような、鳴き。これまた、大きな声です。森のあちこちでよく聞く声です。こうやって、鳴き声を先に聞いてから、鳴いている鳥を見付けると、鳥の声がよく頭に入り、楽しいものです。英単語を、受験用に頭に入れた時の、何百倍もの充実感があります。

 満足顔で突き進でいると、イキナリ白い光が目の前をよぎる。慌てて目で追うと、白黒赤の綺麗な鳥。木にへばり付き「こっこっこっこっ」。アカゲラだ!(赤啄木鳥 写真下)


アカゲラ
アカゲラ

 見たい見たいと思っていた鳥なので、しばし動くことができないほど感動。カメラのことも忘れてしまい、慌てて、しかし、そーっとカメラを取り出した時には、もう何処かへ飛び去ったあと。少し残念でしたが、感動の方が勝っていたので、もちろん笑顔です。森の中で、にんまりしている姿は、他人には見られたくないですね。

 アカゲラの留まった木は、周りの木々とは違った種類の木だったので、虫の多いお気に入りの木だろうと思い、張り込み作戦決行。「今度は逃すまい。」と、カメラもしっかり手に握り、心は森と一体化(アブナイが堪らない)。上空を大鷹らしき猛禽類が飛び、腰が浮きそうになるのを、グッと押さえ込み、ドキドキ待つこと数分。ひらりとアカゲラが舞い戻ってきた。予期せぬ早い再来に驚きながらも、「よし!」と撮った一枚が上の写真。うーん満足なり。

 ドイツは日本より北に位置するので、日本では、北海道でしか見られない種類の野鳥もいるようです。啄木鳥仲間のクマゲラもいるようなので、是非見たいものです。日本で珍しい鳥といえば、カササギ(鵲 写真下)もいます。日本では、北九州地方だけでしか、見ることができない鳥です。


カササギ
カササギ

 青く綺麗に光り、飛び立つ躍動感溢れる一枚!と言ってしまえば聞こえはいいのですが、近づいた時に逃げられ、慌ててシャッターを切っただけの一枚です。結果オーライとしておきましょう。この鳥も警戒心が強いのか、あまり近づくことができません。もっと近くで観察してみたいものです。

 ドイツは、街にも多くの緑があり、公園もあちこちにあります。そして、どこも良い感じの公園です。新しくできた公園でさえ、違和感なく街に溶け込む公園になっています。つくづく日本の公園の貧しさを痛感します。街に緑が多く、野鳥も楽しそうに街中を飛び交います。もちろん、商店街に入ると、四十雀のような小鳥は少なくなり、「飛ぶネズミ」と言われるハトと、イエスズメと、カラスが多くなります。それでも、一歩中心部を離れると、ものの5分で、多くの野鳥を見ることができます。

 街から少し離れたところでも見ることができ、心を奪われているのが、ヨーロッパコマドリ(ヨーロッパ駒鳥 写真下)です。大きさもスズメぐらいで、好みのサイズ。綺麗なオレンジ色の胸をそらし、よくとおる声で囀る姿は、見ていて飽きません。愛媛県の県鳥であるコマドリの親戚ということもあり、大好きな野鳥です。


ヨーロッパコマドリ
ヨーロッパコマドリ

 どうです、この可愛さ。

 こうして、野鳥の世界にズッポリ入り込んでしまいましたが、自然に身を溶け込ませ、野鳥を見る快感は、やってみなければわかりません。それはもう、病み付きになる甘い蜜。一度お試しあれ。

 いいですよー、野鳥。



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