RUNDGANG 2002
 17. - 21. Juli 2002  Kunsthochschule Kassel


 年に一度の学内展が終った。

 ドイツの美術大学では年に一度、学内展が催される。一年間の成果を示す場だけに、学生達は気合いを入れて望むことになる。ギャラリーなど学校外での展覧会をこなしている学生にとっては、それほど重要ではない展覧会かも知れないけど、まだまだ、チャンスを虎視眈々と狙ってる野望家にとっては、ギャラリストも来るであろう学内展は、自分を売り込む勝負のリングであり、「売り」を狙っている商売人には、格好の卸売市場なのです。

 まあ、そうは言っても、学生は学生であって、いわゆる大学祭の雰囲気が濃厚。OPENINGの日は、夜中まで学校中を人がウロウロしながら、ビール片手に作品を見て回り、朝まで踊り狂う人々も多い。開催期間中は夜になると、あっちこっちのクラスでパーティーが開かれ、みんな浮き足立つことこの上なし。


 「チャンスを狙うぞ!」というより、「歌って踊って、むふふふふっ」と楽しむ方が重んじられるカッセル大学学内展、これで良いのか悪いのか。ま、良くも悪くもこれが「カッセル」なのだ。

 そのカッセルでは今、「Documenta11」が開かれています。5年に一度の世界規模の美術展覧会。普段は田舎っぺ大将さながらのカッセルにも、人がワラワラと押し寄せ、なんだか違う街のようになってしまい、ふと英語が聞こえてきたり、見かけないお洒落をした外人(ドイツ人以外)が目立つようになる。高そうなデジタルビデオもよく見かける。普段のカッセルに無いモノばかり。少し楽しい雰囲気ではある。

 よく野鳥を見に行く公園の中にDocumentaの作品が置かれ、湧いて出た人がウロウロするので、ゆっくり野鳥観察できなくなったり、ミソサザイを見た茂みに食い込んで、簡易お土産物屋ができていたりと、気に食わないこともあるのだけれど、致し方あるまい。


 さて、学内展こと「Rundang2002」ですが、年々傾向が変わってくる。世の中の美術も映像中心になってきているので、カッセルも例に漏れず、コンピューターを使った映像作品が幅を利かせてくるようになった。

 普通に「美術」と聞いて思い浮かべるであろう「絵画」や「彫刻」などは見る影もない。絵描きの端くれとしては、悲しいことです。映像でもグッとくる楽しいモノはあるのですが、「昨日から始めました!」と言わんばかりの8ミリさながらの映像はもう見たくない。流行っているからといって、手をだすことは無かろうに、、、。

 しかし「現代美術」と言われるモノは本当に得体がしれない。ウンチク勝負さながらのコンセプト大会かと思っていたら、なんか訳の分からないモノも美術に入ってきてる。ウンチク至上主義者が作品を前に、難しい言葉や片言のカタカナを並べて悦に浸る姿は見ていて痛いほど恥ずかしい。「モノ」が悪いのに、いくら云々言ったところで、「あっそ。」っとしか思えない。美術なんだから、まずは全てを圧倒するほどの「美しいモノ」であって欲しい。それからポツポツとしゃべっていけばいいのだと思う。

 美しいだけでは「デザインじゃん」ってことになるかも知れないけど、実際美術よりデザインの方が強そう。日本で生活すると、隅から隅までデザインされたモノばかりで、美術なんて全く見かけない。極々希に美術館に足を運んでも、見るのは「印象派展」だったり、デパートの版画展だったりと、幅が狭かったり見当違いだったりする。デザインの方が生活に浸透している分、影響力があるように思う。美術がデザインに影響を与えることも多いかと思うけど、それだけでは寂しい。デザインも軽いデザインだけでなく、真のデザインがはびこると面白い。

 カッセル大学には、デザイン科もあり、美術科より断然面白く、熱くなってきている。学内展でも、美術の作品より、デザインの方がヤル気もあり、洗練もされているように思えてならない。当然の流れのようにも感じられるけれど、この結果に物足りなさを感じているのも確か。古い人間なのか…。


 それでは、美術はひっそり静まり返っていたのかというと、そうでもない。面白くない有象無象の中で、グングンと光り主張してくる作品もある。今回の学内展では、新入生が強力に力を発揮していた。どう考えても新入生のレベルではない作品があった。美術界は30歳でも若手と言われる世界だけれど、イケる奴は20代前半で、恐ろしい作品を作っているもの。なるほど。

 展覧会後には、毎年なにかしら思うところがあるRundgangだけど、5年目の今年はいつもより色々と思うところがあった。

 これからの人生、さらに面白くなりそうな気配。


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