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シベリア鉄道

 シベリア鉄道…。

 よく聞く名前だが、詳細は謎に包まれている。一昔前なら、ヨーロッパに行くためのメジャーな交通路だったはず。ユーラシア大陸を電車で横断。気になる…。偶然にも、無職(゚Д゚)。ここで行かねば男が廃る!さぁ出発だ。

国内移動

 シベリア鉄道のチケットは、ウラジオストクからモスクワまでを購入。まずは、ウラジオストクまで行かねばならない。のんびりガタゴト列車旅なので、ウラジオストクまでは、飛行機ではなく船を選択。富山から、2泊3日でウラジオストクに着く。愛媛からアレコレ電車を乗り継いで、富山に到着。船はでっかいルーシー号。船上で入国審査などあり、初めての感覚。船の旅は、三食昼寝付き。二人部屋で44,000円(手数料込)


船内食

 さっそく食事をし、ぶらぶらと船内を散歩するが、2時間も歩けば、隅々まで熟知してしまう。甲板にでれば、日本海にぶっ飛ばされるのではないか!ってぐらいの暴風。大人しく本でも読むしかない。気がつけば、次の食事の時間。そそくさと食堂に行き、ロシア人と一緒に食事をする。乗客は、ロシア20、日本8、オランダ2、ドイツ1と少数ながら、既に外国気分。外をみれば、日本海に沈む夕日が紅い。旅に出た実感が湧いてくる。


ゆうひ

 食べて寝ての暮らしも3日目、外を見ても海ばかりで飽きてきた。おまけに食事がどんどん不味くなるし、船の揺れもパワーを増してきている。もうやめてくれ〜っと思ったら、ごごごっと唸り、静かになった。ウラジオストクに到着したのだ。霧の濃い湾に軍艦が並び、広がる世界は日本のものとは全然違う。あぁ、ロシアだ。今日はホテルに泊まり、明日の夜に鉄道にのる。のんびりウラジオストク観光だな。

ケーブルカー

 まずは、街の全貌を掴もうと、展望台に向かう。坂が多い街で、日本や韓国からの中古ディーゼル車が、モクモクと黒煙を上げて坂道を走り回っている。ってか暴走?。運転が荒く、バンパーの無い車が平気でチョロチョロしている。そんな危険な香りのする道の横断は、適当に車に当たらないように渡るべし。車は、なんとなく止まってくれるから…。などの交通ルールを体得しながら街を抜けていく。静かな住宅街のなかに、人気がないズンっとしたケーブルカー乗り場があった。お金を払い乗り込むと、階段状の座席に数人の現地民が乗っている。しばらく待っていると、急斜面をガタガタと登る。展望台はすぐそこだ。

ウラジオストク

 すげ〜。ウラジオストクを、ぐるり一望できる。こうして離れて見てみると、緑が多くて好感の持てる街並みだ。帰りは下りなので、ケーブルカーには乗らず、裏道をうろうろしてみる。野良猫がうろちょろしてる横には、壁が崩れたアパートが立ち並ぶ。新しいビルも建っているけど、全体のイメージとしては活気はあるが暗い。


ロシア号

 夜の7時に駅に行き、列車を待つ。電光掲示板に示されるホーム番号をチェックする。ふむふむと電光掲示板を見てみると、キリル文字が飛び交い、全く理解できない。ロシア旅には必需品の会話集と照らし合わせて、ホームへ向かう。ド〜ンとロシアカラーの列車が停まっている。むむっ、想像と違う!イメージでは銀河鉄道999的な、古くて、木製のベットが…って思っていたのだけど、部屋には液晶テレビまであるじゃないか。2等寝台なので、2段ベットが2つある4人部屋。モスクワまで6泊7日。さぁ出発だ(゚∀゚)


駅の風景

 同室には、ロシアの陽気なおっちゃんと、寡黙なロシア青年。英語など通じない完全なロシア部屋。休むことなく話しかけてくるおっちゃんの攻撃を、98%の予想で答える。身振り手振りイントネーションから会話を予測し、会話集や日本語で答える。こんな状態でも3割は話しが通じているのだから面白い。コミュニケーションの神髄ですね。


売店

 シベリア鉄道は、基本的にグングン走りっぱなしなんだけど、たまに2,3分の停車駅があり、1日に3度くらいは15〜30分停車する駅がある。この時は、ササッと列車を降りる。するとホームや、駅の外にアレコレ店が出てる。おばちゃんの手作りおかずがズラリ。ハンバーグの中が赤かったり、酸っぱかったり、糸引いたりと、いろいろあるらしいが、ジャガイモのピロシキは美味かった。


かっちょいい

 しかし、気を抜くと長い停車駅でも、店が出ていないときがある。そのときは、買いだめしてある食料でしのぐしかない。これが続くと苦しくなるんだよなぁ。昨日買ったピロシキに、インスタントスープ。このキノコスープはうまかったけどね。


読書

 車窓には相変わらず、どこまでも続く草原が広がり、木も茂らぬ寒々としたところも多い。しかし、路線沿いにはポツポツ集落がある。たまに、なーんにも無いところに、ポツッと家があったりする。冬は、雪に閉ざされるだろうに…。


ちょっと街

 ガタゴト揺れること3日目ともなると、列車の中での生活ペースも掴めてきた。シャワーが無いので、トイレでエッチらコッチら顔や頭を洗い、身体を拭く。寝れるだけ寝る。本を読んで、ピロシキ囓って、夕陽を2時間くらい眺める。列車の旅とはこんなものかな。


貨物列車

 ぼーーっと。流れる風景を見ていると、あれこれいろんな思いが湧いては消えていく。旅に出る前は、シベリアでは、ゆっくりじっくり人生について考えることができるだろうなぁっと思っていたのだけど、実際は、現実離れし過ぎのためか、疲労で集中力がないのか、考えがまとまらない。シベリア恐るべし。


川

 これほどの大自然の中を走っていると、いくら見慣れてきたといっても、突然震えるような風景が現れることがある。そんな風景もスーーッと流れてしまうのも列車の旅の味わいですね。

おじさん

 シャッターチャンスを逃さぬように、常にカメラを手元に置いてるのだけど、あまりにも美しく、シャッターを切るのも忘れてしまうこともある。もちろん、ロシアのおっちゃんも魅入ってる。



バイカル湖

 ほら、こんなの出てくるんだもの。世界遺産のバイカル湖。世界最大の貯水量で、世界最高の透明度を誇る古代湖。おまけにキャビアの親であるチョウザメがウロウロしてるとなれば、ほ〜っとしか言いようがない。なんとも懐の深い美しさがある。まぁ例に漏れず、人間による水質汚染が酷くなってるらしいけど…。


廃墟

 草原にポツリと廃墟がある。シベリア鉄道に乗ってから、あっちこっちで廃墟を見かける。じんわりと自然に溶け込んでいくかのような、屋根の無い煉瓦の壁が、シベリアの空気に馴染んでいる。


夜

 夜中の停車駅も結構ある。白夜にはならないが、日の入りは23時ぐらい。夜中だというのに、みんな列車から降りて、ブラブラ身体を動かす。ずっと狭いベットに転がり、カチコチになった身体をほぐさねば。


キオスク

 モスクワが近くなってくると、じわじわと人の気配が増えてくる。駅も自動改札になり、セキュリティーも上がり、怪しい露天商がいない。こうなれば、食料はキオスクで買うしかない。この店構えだと、指さし買い物がしづらく苦労する。ついでに、キオスクの語源はロシアだってさ。


泳ぐか?

 都会が近くなると、風景が変わってくる。川にはキャンパーや釣り人など、川遊びをしている人が多くなり、人の気配が濃厚になる。いくら大陸性気候だといっても、まだ6月のシベリアなんだけど…、泳げるのか…。


モスクワ

 シベリア鉄道に乗って6泊7日、ようやくモスクワに到着。ここは今までの街とは全然違う。駅に溢れるひとひとひとひと。ひとが居ないことに馴染んだ身体に、この人混みはキツイ。そそくさとホテルへ向かう。


赤い

 さて、モスクワ観光だ。旅行会社のひとに、裏道は危険だ!ホントに危険だ!と脅され、列車や船で一緒になったロシア人からも、地下鉄に乗れば泥棒ばかりだ!とクドクド言われていたので、気を張って行動していたのだけど、地下鉄では、降りる駅を教えてくれる強面のおいちゃんとかいて、平和だった。結構平和じゃないのかな?裏道は歩かず、夜の地下鉄にも乗らなかったけどね。


ロシア正教

 赤の広場は赤く、聖ワシリイ大聖堂は狂った色彩でテトリスを思い出す。しかしまぁなんと人が多いこと、そして女性の綺麗なことよ。みんな笑顔でアイス片手に楽しそう。ロシアに来てからずっとそうなんだけど、むっつりと笑わないロシア人って先入観がスッパリ崩壊。陽気なんだよなぁ、みんな。


ベラルーシ

 モスクワから列車に乗り、2泊3日でベルリンに向かう。ロシアを抜け、ベラルーシに入ると、草原が田園風景になり、みるみるヨーロッパの空気に変わってくる。大自然の圧倒する力にも惹かれるが、人間の手が入った風景はホッとする優しさがあって心が和む。


ポーランド

 ポーランドまで来ると、家が格好良くなり、ゴミも無くなってくる。じわじわと文化レベルが上がってきてるのが感じられる。ロシアは、ず〜っとゴミだらけだったからなぁ。


ベルリンHBF

 ベルリンの中央駅に入る。標識、ベンチ、建物、すべてのデザインが洗練されている。お国柄ってのがあるのだろうけど、ドイツは馴染むなぁ。この後、カナダ経由で、ぐるり地球を回って、日本に帰ったのだけど、東京が一番汚かった。

 電車に揺れに揺られた厳しい旅だったけど、ユーラシア大陸のデカサを体感でき、良い経験になった。僕は、体験でしか知ることができないので、せっせと動いて、いろいろと身体に入れていく。こうやって、生きてる実感を味わうのだ。



「日記的殺法」 2009年6月の日記には、毎日の記録と旅の続きがあります。

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